夜景のきれいなレストランへ。両親と
先月。両親が大阪へ出てきた。
お前の仕事場をいっぺん見ておきたいと。
平日だったけれど、昼から休みにした。
中之島の美術館へ車で迎えに行き、
少し遠回りをして靱公園のいちょう並木など
市内を走った後、仕事場を案内した。はじめてのことだ。
ここ数年予想もつかないくらい、いろんなことがあって
両親には本当に心配をかけてしまった。
彼らの支えが無かったら、もう立ち直れないくらい
心が折れてしまっていたかもしれない。
「ここが正念場や」「がんばれ。がんばれ」「大丈夫や。できる」
非常時だったので、普段決して口にしないような励ましをたくさんもらった。
連日、代わる代わる、電話口で。
はじめて心の内を腹を割って話せたかもしれない。
絶対に、何があっても、無条件に自分を信じて認めてくれる存在。
…ありがたい。はじめてそう、心から思った。
絵を描く行為も、つきつめるとあるいは認めて欲しいという
承認欲求なのかもしれない。
ふと思う。
「ここでちゃんと、やってるんやな」
仕事場を見て両親はなんだか安心したようだった。
IKEAで9,800円で買った、すぐに傷が付くパイン材のテーブルを
やたら気に入ったというので、今度良かったら車で行こうと誘った。
それから、日が落ちてしまって残念だったが、
紅葉のきれいな大阪城公園を3人で横切って、
予約しておいた地上39階にある夜景のきれいな
レストランへ連れて行った。ちょっとだけお高いところ。
この日は眼下に見えるはずの大阪城のライトアップが
なぜだか消えてしまっていて、スタッフの方も
めったに無いことだと首をかしげていたけれど、
両親はとても喜んでくれた。
これまで姉弟でお金を出し合って祝ったことはあるが、
ひとりで両親に食事をプレゼントしたのは四十にしてはじめてのことだ。
…ごめん。
親孝行したいときには親はなし、なんていうけれども
数年前に揃って70歳を超え、年齢相応に歳を取ったが
おかげさまで両親共に心も身体も元気だ。間に合った。
いつでも帰れる距離だけれど年に数度しか帰省しない。
あと何回いっしょにご飯を食べられるのか。
…いつまでも元気でいてくれよ。
父は夜10時には寝るので7時過ぎに早い解散。
京橋駅の改札で別れて、大阪駅と反対側のホームへ
降りていこうとする両親を慌てて呼び止めて、
歳を取ったなと思う。でもまだまだ元気でいてくれよ。
帰り道。散歩がてら二駅分、歩いて帰っていると母からメールがあった。
「今日はありがとう。夢のような1日でした」
嬉しいような哀しいような、なんとも言えない気持ちになって、
さらに二駅分、あてもなく歩いて、はじめて入ったバーで
閉店まで飲んだ。
(追記)
この記事をアップして2日後。父が脳梗塞で倒れて救急搬送されたと
連絡があった。幸いにして命に別状は無いらしい。
検査入院して近日退院できるそうだ。
…なんというタイミング。だけどそれだけいつ何があっても
おかしくない年齢だということだろう。
それにしても本当に良かった。